2007年8月に発生したサブプライム問題の深刻化で、100年に一度、津波といわれる金融危機に発展、日本株も本年10月27日には日経平均が26年ぶりに終値で7,162円に急落するなど大きな影響を受けています。そのような中、日本株は今が底値に近く、買い時と考えた個人投資家が日本株とそのETFの購入に向かい売買代金が急増しています。
11月10日に東京証券取引所(以下東証)が発表した、ETFの10月売買代金は3,121億円で、前月比63%増。大阪証券取引所(以下大証)のETF売買代金も3,338億円、前月の約2倍となり、2006年6月の両証券取引所売買高の記録6,602億円に迫る勢いです。また、日本経済は比較的ダメージが小さく世界に対し相対的に有利な立場になり、危機後日本株に外国投資家の関心も戻るのではないかとの判断も働いたと思われます。
今後、個人投資家が日本株式を組入れる際に、個別株固有のリスクから逃れられ、購入・保有コストの低い日本株式型ETFの重要性が益々高まると考えています。
日本株式型ETFの上場の推移と種類
ETFはカナダ・トロント市場に1990年初めて上場され、米国市場では1993年にS&P500株価指数に連動するSPDRSの上場後、1997年頃から株式相場の上昇と、インデックス投信人気の高まりから、1998年ダウ工業株30種平均に連動するDIAMONS、1999年ナスダック100が上場されるなど、個人投資家、機関投資家、証券会社が積極的に参加し、ETFの市場規模は飛躍的に拡大しました。
一方、わが国は10年遅れの2001年7月に日経225平均株価と東証株価指数(TOPIX)に連動する2タイプが上場され、以降上場数18本、廃止5本で2006年末でも13本でしたが、2007年から此処2年で様々なタイプのETFが上場され、11月10日現在東証と大証合わせて68本が上場されるまでになりました。
68本の内訳は表1.の通り、日本株式型は54本、内TOPIXと日経平均に連動するもの8本、業種・業界別指数に連動するもの38本、規模別の指数に連動するもの7本です。
お客様が日本株への投資配分とそのポートフォリオを検討する際に、日経平均やTOPIXに連動するETFをコアとし、サテライトとして夫々の考えに基づいた、内需に対応した業種例えば電力、医薬などの指数に連動するもの、世界的に傷が浅いとされている銀行業株価指数に連動するものなど業種・業界の動向、株価回復局面では大型・中堅・小型株等規模別に着目するなど、組み込む選択の幅が広がってきています。
今後は、ETF先進国である米国にあるように、東海地区などのエリア別指数に連動するもの、高配当株・バリュー株・グロース株などセグメントした指数に連動するもの、または環境ビジネスや国内外のインフラ整備の企業群などの抽出した指数開発とそれに連動するETFの上場が予想されます。
表1.東証・大証に上場しているETF 2008.11.15現在
| 分類 |
連動の対象 |
本数 |
| 国内株式 |
TOPIX |
3 |
| TOPIXCore30(大型で流動性が高い株式) |
3 |
| TOPIX100(大型株) |
1 |
| TOPIX Mid400(中型株) |
1 |
| TOPIX Small (小型株) |
1 |
| TOPIX 17 (業種別カテゴリー) |
34 |
| 東証電気機器株価指数 |
2 |
| 東証銀行業株価指数 |
2 |
| S&Pに本新興株100 |
1 |
| ラッセル野村小型コアインデックス |
1 |
| 日経225平均株価/300 |
5 |
| 海外株式 |
韓国、ブラジル、中国夫々の株価指数 |
6 |
| 不動産 |
東証REIT指数 |
2 |
| 商品 |
金、S&PGSCI商品指数 |
3 |
| 通貨 |
ルーブル、ルピー、レアル |
3 |
| 合計 |
68 |
東証・大証HPより筆者調べ
ETFを検討する上で対象となるのは、株式と従来型の投資信託(インデックス・ファンドを含む)です。表2.を参考にETFの特徴を捉えてみます。
ETFは証券会社を選ばない
日本株式型ETFは投資信託とは異なり、どこの証券会社(一部銀行)でも市場での売買が可能です。従って、既に口座のある場合は、新たな取引先は必要有りません。
ETFの一番のポイントは『分かり易さ』です。
株式は、トヨタ自動車など知名度の高い企業は、どの業種に属し業績の好調・不調は新聞・TVで報道され概要が分かります。しかし、多くの企業の経営状態は公表データや会社四季報などで調べなければ分かりません。また、投資信託は日本の公募投信だけでも3200本以上、TOPIXをベンチマークとするものだけで540本もあります(投信評価システムVTASデータ10月第5週)。その中から、予めTOPIXを上回る運用成績を残す特定のファンドを選ぶのは至難なことです。
その点、株価指数に連動するものは、日本経済の動向や対象とする業界の動きに連動しますので、インデックス・ファンドとETFは初心者にも分かりやすいものといえます。
なお、パッシブ運用では、連動対象となる指数に対して、取引価格が乖離しないことが良いファンドです。ETFはインデックス・ファンドとは異なり、現物の株式ポートフォリオと受益証券を交換するだけなので、現金の出入りがなく、常に株価指数先物取引などとの裁定取引も行われるため、結果的に取引価格が目標とする指数の動きに近くなります。
個別株固有のリスクが除かれる
ETFは株式の特徴を備えた投資信託と捉えられます、ただし、個別株とは異なり倒産はありません。また、TOPIXに連動するものは、東証1部全銘柄への投資と同義になりますから固有株リスクがない投信といえますし、業界の株価指数に連動するものは業界そのものを購入することと同じになるなど、幅広くリスクが分散されています。
従来投信と比べ、安いコスト
各商品のコストは表2.に記すとおり、株式は売買手数料、ETFは売買手数料と信託報酬、投資信託は買付手数料、信託報酬と信託財産留保額になります。毎日資産残高に掛かる信託報酬はETFと従来投信では大きな差があります。例えば、TOPIXや日経平均に連動するETFの信託報酬は0.1%〜0.2%前後で、業種別のETFでも0.336%に過ぎません。一方、投資信託の平均は1.39%ですし、安いとされるインデックス・ファンドでも平均は0.64%になります。日々支払う額ですので長期投資では成果の大きな影響を与えます。
また、売買手数料も株式に準じていますので、費用負担は小さく短期売買も可能です。このため、長期運用の投資家、短期運用の投資家どちらにも扱い易い商品といえます。
信用取引とレバレッジの活用
ETFは上場株式に準じていますので信用取引が可能です。価格の下降局面では、ETFを保有せずに売ることも出来、そして約3倍強のレバレッジが可能です。また、リアルタイムの取引ですから同日売買も可能で短期売買の手法が使えます。
弱みは再投資が出来ない
ETFは株式配当金同様分配金は払い出され再投資という手法が使えません。長期投資ではMMFを活用するなどで貯蓄し売買単位まできたら購入する、を繰り返すことが必要です。
購入は原則単位口数
投資信託は1万円からなど小額からの購入が可能ですが、ETFは購入単位が10口、100口で設定されているものがあり、一定額が必要になります。TOPIXや日経平均に連動するものは、現時点で9万円弱の資金が必要ですが、東証上場の業種別17種のETFは1口単位になりましたので、1万円程度の資金でも購入が可能になりました。購入コストは高くなりますが累投は使えます。
流動性リスクと上場廃止リスク
ETFの場合、売買数量が少ないため売却したいときに売れない流動性リスクと、売買数量の少なさで上場が維持できずに上場廃止になることがあります。購入にあたっては、出来高などのチェックと、同じ指数で複数の銘柄がある場合には、売買出来高の多い銘柄を選ぶなどの注意が必要です。
例えば、主要な指数TOPIXに連動するもので、売買金額に約17倍の差があり、TOPIX−17 (食品、医薬品など業種別17カテゴリー)に連動するETFは34本ありますが、08年11月14日に取引が成立しなかったもの18本、1口だけの取引は5本もありました。
4.株式・上場投信ETF・従来型投信の違い 2008.11.13作成
| 項目 |
株式 |
ETF |
従来の投資信託 |
| 購入場所 |
全銘柄全国の証券会社からどこでも購入可能 |
取り扱い金融機関のみ |
| 購入単位 |
売買単位ごと |
金額または口数で |
購入価格
売却価格 |
投資家が指定することが可能(指値・成行の別あり) |
指定不可能 |
| 取引価格 |
取引時間内でリアルタイムに価格が変動 |
終値で計算する価格1本 |
| 信用取引 |
可能 (レバレッジは約3倍) |
不可能 |
| 同日売買 |
可能 |
不可能 |
| 取引方法 |
株式 |
受託証券の売買 |
受益証券の設定・解約 |
| 再投資は使えない |
分配金の再投資が可能 |
| ミニ株投資や累投が使える |
積立ありの販売会社が多い |
銘柄名・価格の
確認方法 |
一般紙の株式相場欄に毎日掲載 随時ネット検索可能 |
専門誌を見るか
取扱金融機関の
ホームページ・電話で確認
(主に翌日以降) |
株式新聞
会社四季報等 |
一部の銘柄の価格は
テレビニュース等で
概略の把握が可能
EX.日経平均連動型 |
売買・買付け
手数料 |
売買手数料
(ネット証券は低価格) |
売買手数料
(株に準ずる) |
買付手数料
無料〜3.5%程
(取扱金融機関で異なる場合有) |
| 信託報酬 |
なし |
TOPIX連動
0.092〜0.116%
業種別0.336%
規模別0.21〜0.525% |
0.6%以上が大半
平均は1.39%
インデックスファンドは
平均0.64% |
| 信託財産留保額 |
なし |
一部信託財産留保額あり |
| 課税の優遇措置 |
株式等の長期保有優遇税制の適用対象 |
株式等の長期保有優遇
税制の適用対象外対象 |
| リスク |
上場廃止・倒産のリスク |
上場廃止のリスク |
期日前償還のリスク |
個別銘柄に係る
リスクあり |
多数の銘柄に投資することにより、
個別銘柄に係るリスクは
分散される |
出典:東証ETFスクエア・大証ETFおよび各証券・運用会社HPより
日本株式型ETFの2009年
ETFの価格は当然ながら、原資産である日本株式の価格変動に連動します。私は、現在の株価は、金融危機と実体経済の先行きに対し、悲観的な観点だけが取り上げられた結果の価格と捉えています。
日本経済はすでにバブル時の3つの過剰(負債・設備・雇用)は解消され、現況金融機関のダメージは少なく、多くの業種でクローバルな観点で比較優位の状態と考えています。そして、既に企業は余裕資金を使い海外でM&Aを開始しています。
幸い、為替も正常なレベルになり(円高)急激な資源価格の下落とあいまって輸入する原材料や製品価格も急落しています。
海外投資家の目で日本株を評価するため、表3はNYに上場する主要なETFの2008年11月17日と1年前の価格・下落率です。円高効果により日本株の下落率は低いことが分かります。
これらを勘案しますと、2009年前半は景気後退の影響で、日本の株価上昇は限定的ですが、年後半からは海外投資家の買戻しや2010年前半の収益の回復期待で上昇トレンドに入ると考えています。
懸念材料は、米国・英国・スペイン等の住宅価格下降が年後半も止まらず、それに伴う不良債権の増加、それに対し各国の支援策が財政上の制限から後手に回り、欧米の景気が、より深い谷に陥る場合です。
表3米国のETFに見る各国の株価下落率(単位ドル)
| ティッカー |
連動の対象 |
07年11月19日 |
08年11月17日 |
下落率 |
| EWJ |
日本の株価 |
13.23 |
8.58 |
-35.1% |
| SPY |
米国S&P500指数 |
140.95 |
85.47 |
-39.4% |
| QQQ |
米国ナスダック株価 |
49.70 |
28.96 |
-41.7% |
| EFA |
米国の俗先進21ヶ国の株価 |
79.17 |
40.45 |
-48.9% |
| EEM |
新興国25ヶ国の株価 |
48.9033 |
21.85 |
-55.3% |
| GSG |
商品指数 |
51.55 |
33.18 |
-35.6% |
08.11.18 YAHOO FINANCE 吉野調べ
※筆者から念のため
投資する際にはに各金融機関等から発表される正式な開示情報をご確認ください。本資料は、投資判断の参考となります情報の提供を目的としたものであり、有価証券の取引その他の取引の勧誘を目的としたものではありません。投資による損益はすべてお客様ご自身に帰属いたします。投資にあたりましては正規の目論見書、説明書等をご覧いただいたうえで、読者ご自身の最終的なご判断をお願いいたします。本資料は、信頼できると判断した情報に基づき作成されていますが、その情報の正確性若しくは信頼性について保証するものではありません。また、情報が不完全な場合または要約されている場合もあります。